産婦人科女医の独り言

つぶクリ院長のつぶやきです。ためになる保証はありません。

Deep River (深い河)

ネットを見ていると

「医者の言うことが分からない! (~_~メ) 専門用語並べられても分かるわけがない!!」

 

みたいな意見を時々見かけます

そういうことがないように、イラストや資料などを駆使して説明しています・説明するようにしています。

理解してもらえるように、最大限の努力はしているつもりなのですが、

あいも変わらず、医者と患者の間には、深い河が流れているように感じます。

 

何故かと考えてみたのですが、

! そうだ!

「患者は医者の言うことが分からない(医療情報量の差と思われる)」

のみならず、

「医者は、患者が分からないことが分からない」

ことも原因なのだと気づきました! ←遅いと言わないで

(上から目線で言っているのではないことをご理解ください。)

*「専門家の常識」を、「一般人」が持っていないからと言って非常識だと言っているわけではありません。

 

そこで、「医者と患者間に流れる深い河」と思われた事項を、ここに挙げようと思います。

どうだ!

大病院勤務中には分からなかった、開業医のプチ知識をお披露目!!(たいしたことない)

 

~当たり前ですが、産婦人科編です。~

 

1. 「子宮を取ったらどうなる?」

患者(以下Pt.)「ホルモンバランスが崩れるんでしょう?」

医者(というか事実。以下Dr.)「生理が無くなるだけです。」

子宮はいわゆる「コブクロ」です。ホルモン産生性はないので、取ってもなにも起こりません。取って影響がでるのは卵巣です。(しかも二つあるうち一個とっても影響はほぼないです)(閉経後の卵巣は働いていないので、二個ともとってもなんも起こりません)

 

2. 乳腺(俗称 おっぱい)の異常は、婦人科では診ません

Pt.「胸のしこりが気になります」

婦人科Dr.「乳腺外科を受診してください」

いや、ごくまれに、乳腺を診る産婦人科医もいるんですけどね・・・かなーり稀です。「乳がん検診」だけやってる産婦人科は時々ありますが、「乳腺の病気」まで診る婦人科医は、知人にはいません。

(開業10年、いまだに乳腺疾患疑いがうちに来るんだよなあ・・・)

 

3. 100%の避妊法は、ない!

これは、全人類に知ってもらいたい!!

腟外射精は、避妊法ではありません!!!(高確率に妊娠します)

それから、「絶対的な安全日はない」ということも周知したい。

ピルを飲んでもリングを入れても、<1%と低率ですが、失敗=妊娠することはあるのです。

たった一つだけ、100%の避妊法がありますが、、それは・・・

『何もしない』。

・・・これに尽きます。

よく、医師が「妊娠の可能性はありますか?」と聞きますが、これは「最近、セックスしてますか?」「セックスしてるとすれば、ばっちりコンドーム使ってますか?」とほぼ同義です。。。。字面だけみると、下品な文章ですが仕方ない。

患者さんが『妊娠の可能性は、たぶん、ないです』と言った後に診察して、妊娠が判明することは、多々あります。あるいは最初は妊娠に気づかず・しばらく経ってから子宮外妊娠が判明することは、産婦人科医だったら一度は経験しているはず・・・。

医学会最大最古の格言(?)「女を見たら、妊娠と思え」というのは、セクハラでもなんでもなく、今も昔も変わらない事実です。

 

4. 基礎体温は、折れ線グラフ化しないと判定できない

生理不順や、挙児希望などで、基礎体温をつけてきてもらうことがあるのですが、

Dr.「基礎体温表つけてますか?」

Pt.「測ってます!今日は、36.5度でした!」

Dr.「・・・(だからグラフを・・・)」

・・・という会話はよくあります。毎日の変化をみたいのであって、数字を聞きたいわけではないのです。

 これと関連した内容で、

4’. 生理周期は、平均しては意味はない

と、いうのもあります。

Dr.「生理周期は何日ですか?」

Pt.「スマホアプリの情報だと、平均30日です!」

Dr,「みせてみて・・・15-45日で、ばらばらだね。。。」

と、いう会話はよくあります。平均しちゃうと、どんな生理不順も順調さっ♪ ということになってしまいます。

 

5. 生理は自由にコントロールできることもある(できないことも、あるのだ!)

Pt.「用事があるから、今の生理を止めてください or  〇月〇日以降に来させて欲しい」

Dr.「・・・」(可能であれば、もちろん対応しますが。)

「月経移動できるよ!」と、ネットに書いてありますが、日程的に余裕がないと無理なことが多いです。

また、ホルモン剤の内服によって副作用が出ることもありますから、過度な期待をせずに産婦人科医師に相談してくださいね。

ちなみに、「今出ている血をすぐ止める」のは不可能に近いです。数日間かかることが多いし、悪い病気の場合は止まりません。

 

以上、思いつくままに書いてみました。

 

~その他、番外編(全科共通編)~

A. 一回の受診で分かることは限られる

患者が受診したときに、その症状から考えられる診断をいくつかに絞ります。その「考えられるいくつかの診断名」から「診断を一つに絞り込むために」検査を予約します。ですから、「これとこれの検査を受けてください。結果は、〇月〇日に聞きに来てください」ということは、その「〇月〇日に診断名をお知らせします」という意味なのです。

たまに「症状があって病院に行ったのに、検査(の予約)しかしてもらえなかった!」というご意見を頂いたりしますが、

『一発で分かるなら、こんなに検査機器はいらないよ・・・』と我々は思うわけです。

 

B. 「様子を診ましょう」は、放置。ではないよ

上記で、一回の受診で分かることは限られる。と書きましたが、「時間の経過によってわかることもある」のです。

Pt.「様子を診ましょう。と言われたから治療は要らないんだ」なのではなくて、

Dr.「様子を診ましょう。症状が悪化したらまた来てください」、の意味でもあります。

 

C. 薬を出さないのは手抜きではない

Pt.「痛かったから受診したのに、あの医者は薬もくれない!プンプン!」

Dr.「自然に様子を見ていたら治るでしょう。お薬は副作用の可能性もあるし、無駄な処方はしたくない」

余談として、「医療費を削りなさい」という、厚生省からの圧が半端な・・・いや、ゴホゴホ

 

D. 去年の健診・健診結果が良かった(正常)といって、現在の健康を保証するものではない!

よく、「去年の健診は以上ありませんでした(ドヤ)」「だから、今日は検査は必要ありません」

などとおっしゃられる方がいますが、去年異常がなくても、現在異常が疑われるから検査を勧めているのだよ・・・

 

E. 検査や手術の待ち時間は、そこそこあるよ!

日本の医療体制は、世界的に見て奇跡です。これは断言できます。

どういう点が奇跡かというと、「フリーアクセス(好きな病院に、好きな時にかかれる)」「なのに、けっこう安い」(←世界的にみて、激安です。無料の国もありますが、フリーアクセスではない)。

さらに、「けっこうハイレベル」。

その引き換えに、「病院が混んでいる」≒「検査や手術の待ち時間がそこそこある」と、なります。

 ちなみに、婦人科手術は、疾患にもよりますが、1-6か月くらいの待ち時間がある病院が大多数です。大人気病院は、なんと一年待ちのところも!!

 

F.  セカンドオピニオンは、保険はきかない

これ、ご存じない方が多いです。正式には、「自費診療(30分で15000円~30000円のところが多い)」で、「現在かかっている病院からの紹介状を持って」「完全予約制で」受けるべきものです。

前の病院の対応が悪かったからといって、『近所の聞きやすい先生に、なんとなく聞く』ものではないですよ!

 

G. 人はいつか死ぬ・老化による悪化は止められない

読んで字のごとくです。医療なんて、無力。

 

以上、あなたのより良い受診につながれば幸いです。

 

ああ、あっという間に三月ですね。。。

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