産婦人科女医の独り言

つぶクリ院長のつぶやきです。ためになる保証はありません。

大型連休

卒業・入学のシーズンですねぇ。

こんな時に計画停電が実施されなくて、ホッと胸をなでおろしているのは私だけではないことでしょう。

今頃の時期には、こんな質問をする妊婦さんが増えてきます。

『連休に、遊びに行きたいのですがいいですか? (^O^) 』

・・・この時期、産科医を悩ませるやりとりです。

そしてたいてい、質問者は[ yes ]の答えを期待・想定しています。
(だったら聞かないでちょーだいよ・・・)とこちらは思うのですが、妊婦さんは医師の保証が欲しくて聞いてくる訳です。

答えは・・・





「お勧めできません。途中や旅先で何があっても責任は取れません」。

現在の日本の産科医の大方がこれと大同小異の回答をしていると予想されます。
そうでない場合は、[ No! ]かもしれません。

『逃げ腰だなー』と思われるかも知れませんが、これには以下のような理由・背景があります。

妊娠というのは、状態が急に変わることがあります。

以下はたとえ話です。(が、十分あり得る話です。)

旅館に着いて、おいしい夕食を食べた後に異状(おなかが張る、出血した、など)に気付いた時にあなたはどうしますか?

『まず、病院にかかって、、、』と思われた方、正解です。正解ですが残念ながらかかれる病院があるかどうかは別問題です。

日本の周産期医療(簡単にいうとお産を取り扱うこと)は、崩壊寸前から立ち直ろうとするギリギリの状態です。

分娩を取り扱う施設は、どこもかかりつけの患者さんのお産で手いっぱいです。夜間に、初診の妊婦は受け付けない施設もたくさんあります。

そうすると、公立病院や大学病院など、いわゆる「大きな病院」に行くことになりますが、そういうところは緊急の患者さんが集まってくる訳でして・・・そこでは今、緊急帝王切開をやっているかもしれない。または子宮外妊娠破裂の手術をやっているかもしれない・・・はたまた、お産になありそうな人が5人並んでいて、外来患者さんを診られる状態ではないかも知れない。。。。

お分かりになりましたか?これが現実です。
私たちは、そういうことを想定した上で「お勧めできません・・・」というネガティブな返事をしているのです。

心の中では「行っちゃだみ!」と言って・・・いや叫んでいます。

妊娠していない人でも、旅行中はたくさん歩いて疲れたり、食べ過ぎたり、便秘になったりしますから、妊婦さんの体への負担はもっと多いと思います。

妊婦さんも、気分転換は必要かと思いますが、それには映画を観たり近所の複合型ショッピング施設に行ったりでもできるのではないでしょうか。

くれぐれも、後悔しないようなマタニティライフを送ってもらいたいと思っています。