産婦人科女医の独り言

つぶクリ院長のつぶやきです。ためになる保証はありません。

たらい考(その2)

(「たらい考」からの続きです)

さて、アンサーは

A.(2)または(3)

え?
ずるい!ですって?

では、模範(かも知れない)解答を見てゆきましょう。*ここでは既に、緊急帝王切開が決まったという設定で書いています

1. 病棟Ns.(看護師);緊急患者の情報を伝えるとともに、空床確認をします。

2. 手術室Ns.;緊急帝王切開になりそうなことを伝えます。(病院によっては、オンコールNs.を呼ばなくてはいけない)

3. 麻酔科Dr. ;個人的には、2(↑)と兼ねるように出来ないかと薄々思っていましたが、現役時代にその願いが叶えられることはありませんでした。
自分が知りうる限りの患者さんの状態を伝えて、ベストの麻酔法を決めてもらいます。

4. 小児科Dr.;生まれてくるのは、未熟児ですから不可欠です。

5. 自科オンコール;帝王切開は、一人ではできません。大昔はやったかも知れませんが・・・

と、ここまではどこの病院でもだいたい共通。
その他、妊婦さんの合併症や 胎児に異常があったりとかすると、以下の電話もしなければいけないかも知れません。

6. 併診科;妊婦さんが、合併症があったら連絡が必要なこともあります。
例)糖尿病があれば、代謝内分泌科Dr.に電話をして、血糖管理をお願いします。周術期は絶食期間があるので、管理にコツ(?)がいるのです。

7. 輸血室;大量出血が予想される時には「転ばぬ先の杖」。連絡が遅れたら、下手をするとクロスマッチ(輸血に適合している血液かどうかの試験)まで自分でやらなければならないこともあり!

そして、以下はオプション。病院によって異なるでしょう。

8. レジデント;今産科を回っているレジがいたら、超ラッキー!!! なにせ、上述のごとく人手がいるわけですから。

9. 妊婦の家族;帝王切開の説明は、妊婦本人と原則ご主人にして、承諾書にサインをもらうのです。ご主人が出張なんぞしていたら、電話で承諾を得ないとイケマセン・・・

10. もう一回手術室;「まだオペ出ししちゃだめ?」とか、逆に「承諾書まだ書いてないからオペ出し待って〜〜〜」など、ケースバイケースですが。

11. 救急外来;「これから緊急手術です」の連絡を忘れると、「緊急に診察を希望する患者」が外来に並んでしまい、後で地獄を味わうことになるのです!!
つまり、『これから緊急オペなので、しばらく緊急患者はストップだど〜〜〜』の意思表示。

・・・これにもちろん、「診察」「方針決定」「患者への説明」「承諾書にサインをもらう」「入院やオペ指示などのコンピューター入力」を並行してやらなければならない訳です。
 病院によっては、点滴刺すのもDr.の仕事なので、まさに八面六臂の大活躍が要求されます。

どうですか?
なかなかブラックな仕事でしょう?


そして、ご想像に難くないと思いますが、こんな思いをしてやっと緊急帝王切開を終えて病棟に戻ってくると、

お産が進行していたり、
救急外来に待ちくたびれた患者が複数待っていたり、
入院患者さんが急変したりして、、、、、、、(エンドレス!)

いることもよくあるです。

でもね、もっと怖いのは、


翌日も通常業務が待っているってこと。


最近は、「当直明け勤務を緩和しよう!」と努力している病院もあると聞きますが、
残念ながらまだまだ少数です。

でもでも、一番しんどいのは、

体も頭も神経もすり減らして行った帝王切開の母児が具合が悪かったり、

患者側が医療行為に不満・苦情を言ってくることですね。(医療内容に瑕疵がないと思われる時でも。)

今回は、私が知っている産科当直の実態を書きましたが、

各診療科でも、各論は違えど、当直はなるべくならやりたくない仕事のひとつだと思います。

全ての医療行為に文句を言うな。というつもりは全くありませんが、

救急医療における診療については、少し多めに見て欲しいなぁ。と思ったらお叱りを受けるでしょうか。
(特に、司法関係者およびマスコミの方々には、救急医療のいろいろに対する認識を改めてもらいたいと希望します)

分かりやすく言うと、

日本の救急医療は瀕死の状態なのです。現在それが死亡していないのは、ひとえに現場のスタッフの使命感(と、おそらくあきらめ?)に依るところが大きいのです。

それを救命するのは「現場の努力」ではなくて、「司法の援護」と「国全体からの救急医療システムの再構築」だと思うのですが、
いかがでしょう? 偉い人たち。


おまけ

・・・それ、院長のだからね・・・

(本当は、もっと落ち着いたピンクを想定して購入したのですが・・・(^_^;)


おまけ その2

このシーズンのコスプレ

来院されたら、見てやって下さいね〜〜〜