産婦人科女医の独り言

つぶクリ院長のつぶやきです。ためになる保証はありません。

日食、見えました?

当院の非常階段からは、よく見えましたよ。。。

久しぶりに、真面目に見たけど、すごいのね、天体ショー。

楽しみましたよ。

浦和近辺はほどよく曇りで、ちょうどよく見えました。

(歩行者は、あまり興味がなさそうでしたが・・・)

薄暗くなってね、そりゃ 源氏も平家に負けるってもんでしょう。(逆だったかな・・・???)


さてちょっと時間が経ってしまいましたが、ご覧になりました?


NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」。


過日、心臓外科医の天野教授を取り上げていました。

言わずと知れた、「天皇陛下の執刀医」です。

目の前の症例(全国から難しい症例が集まってきているであろう)に、真摯に 全力で立ち向かっていくという

その 求道者にも似た姿勢には頭が下がります。

だってね

動いている心臓に、7-0とかの それはそれは細い針で縫合していくんだよ?

(ちなみに帝王切開で使う縫合糸は、2-0とか1とか、肉眼でもよぉく見える太さです。参考にならないか・・・)


感心と感動しながら見ていましたが、次第に違和感と胸苦しさを感じました。

はて


はて (@_@) ・・・


この違和感は、何だろう〜と考えてみました・・・


(回想。)

古い話になりますが、番組中に出てきた病院に私も勤務したことがありました。

大学病院です。
そして、大学病院というところは、

「一番になりたい先生たち」 が集まるところでもあります。

その一番というのは、

論文数が一番多い

とか

診療実績が一番

とかです。

結果 手術枠(手術室を使える時間とも言い換えられますが)も各科で奪い合い でした。


産婦人科なぞは、緊急手術が多く(言わずと知れた帝王切開とか、子宮外妊娠とかね。⦅現在は異所性妊娠 に改称⦆)、

「予定手術が一杯で、帝王切開の予定が入らない〜」ということなぞは日常茶判事でした(まぁ結局やるのですが。)

さらに、
(手術室スタッフの勤務時間が長くなり過ぎないために、)

「手術は、午後五時までに終わるように予定を組むべし。」 という不文律もありました。

なんとか収めるために、「ホントは4時間かかる手術」を「2時間予定」と書いて提出したり・・・

(すぐばれて、呼び出されて怒られたりしたこともあったけどね)

それがそれが!

超ハイリスクで「何時間かかるか分からない手術」 
を、

午後出しでやってしまい・・・

更に!

14時間もかかってしまう(これは全く持って仕方がないのですが)という・・・


まさに
「神の手」による

スーパー手術!


そしてそれを支えるコメディカルもすごいと思います。

麻酔科医(かなりの知識と経験を要すると思われる)複数人、

手術室看護師(同上)、CCU看護師(同上)、

ME(同上)、

助手の心臓外科医たち(術後管理も大変そうです・・)

その他、輸血室や、薬剤部など。


ハイリスクな手術は、気の遠くなるほどの人員と手間を要するのです・・・


話はそれますが、・・・

誰も口には出しませんが、手術室で優遇される順位ってあると思う。
(私調べ。多少の違いはあれど、各病院にあると思う)

第一位 心臓外科。これは議論の余地なし
第二位 一般外科
同率二位 脳外科



あとはドングリの背比べです。泌尿器科とか産婦人科とか耳鼻科皮膚科眼科・・・
(まぁ、生理止まっても死なないもんね (^_^;)

例えば・・・
心臓外科の手術の直接介助(いわゆる器械出しです)は、
一番優秀な看護師がなる。
そしてほぼ固定メンバーが手術に携わるのです。

これは、でかい。

日替わりとかじゃなくて、

慣れた看護師から、

「いつもの器械」が「いつものように」出てくると、

そりゃ、医者も腕が上がる(と感じる)もんです。

これが、
「慣れていない(すなわち術式をよく覚えていない)看護師」が手術に付いて、

あまつさえ「指示した器械を出せない」「指示したとおりに出さない」

となれば・・・

関係者でなくても、そのストレスは想像できることと思います。

帝王切開なぞは、

「いつでも」「誰でも」直接介助ができなくてはならない術式ですから、

だいたい 新人のデビュー戦 になることが多いです。

(もちろん、助っ人の先輩看護師は付きます。)

それは別にいいのですが、

これが毎年春に行われると、キツイ・・・
(せっかく出来るようになった看護師から、まっさらな看護師に変わるのですから。)

そして、「5時までには手術を終わらせる」という大前提のもとで、

午後5時を過ぎると、直接介助の看護師が帰ります。 

(帰ることがよくある、というのが真実)

↑ これ、本当です。
介助がいなくなってどうするかですって?



医者がやるんですよ。


しかも、経験がある程度ないとできないものですから、

中堅クラスの医師がやることが多いのです・・・


「6時出しの緊急カイザー(帝王切開)、看護師ついてくれるって!!」


「まじっ!? ラッキー

\(◎o◎)/!」


↑ リアルによくある情景です。

ロッキー(ボクシング映画のね。)が、なんとか勝利を飾った時に叫んだ、



『エイドリアーン!!!』


・・・これくらいの歓喜です(大げさ)


皆さま、なんとなくわかって下さいます? 私の鬱屈が。

論点がブレまくりましたが、

昔の、そんなこんな 苦い思い出が蘇ってしまいました。

蘇って、長々と書いてしまいました。。

天野教授は本当に名医だと思います。

しかし、その陰には、(一般の方はおそらく)想像しえないようなたくさんの人員の関与と、
事務処理がかかわっていることを知って欲しいと思います。

(手術枠を巡った小競り合い、もね (笑)


そして 今日も 今夜も

目の前の患者さんを良くするために、
身を削っている医師たちの
 
心と 体の健康が損なわれないことを

願ってやみません。



結論:勤務医には優しくしよう!



以上、へっぽこ開業医でした。