産婦人科女医の独り言

つぶクリ院長のつぶやきです。ためになる保証はありません。

コウノドリ

テレビドラマが、また始まりますよ〜

(日本産婦人科学会が推奨する名ドラマです)←本当

コミック単行本の、最新刊では、冒頭に悲しい話が出てきます。

羊水塞栓 です。

羊水塞栓とは、羊水が母体血中に混入することにより、1.羊水中の胎児成分による肺内小血管の機械的閉塞 および 2.アナフィラキシー様ショック が起こり、それにより全身状態が悪化する疾患です。

症状をざっくり表現すると、
呼吸が苦しくなり、そして
出血が止まらなくなり、どんな治療にも反応が悪くなります。
冗談ではなく 『蛇口から水がじゃーっと出る』 ごとく出血するのです。

つまり、致死率が高い。2010年の産婦人科学会誌には60-80%とありました。

羊水塞栓を起こした妊婦を救命するには、

全身管理(呼吸や血圧の確保)

輸血

などがあります。

残念ながら、羊水塞栓の予測は、難しいです(ほぼ不可能)

リスクの高い条件として、
帝王切開』や、『羊水過多(羊水が多いこと)』が言われていますが、そうゆう妊婦が全て羊水塞栓になる訳ではなく、よく分かっていないのが現状です。

幸い、私は遭遇したことはありませんが、
ある程度大きな病院の産婦人科には、『○年前に、羊水塞栓があってさ〜』と、語り草になっていることが時々あります。

つまり、それくらい低い頻度ってことです。(1/2万〜3万分娩というデータあり)
日本の年間分娩数が、約100万ですから、年間の羊水塞栓の数は、33〜50人ということになります。

原因が分かっていないのですから、予防法ももちろん分かっていません。

このように、お産にはまだ解明されていないことがたっくさんあります。
そして、産科の恐ろしさは、「秒単位で病状が変化する」オソロシイ疾患がいくつかある。ということです。

ほとんどの妊婦さんは、何事もなく・元気な赤ちゃんと一緒に 家に帰ってくるのですけれど、
上記に書いたように、オソロシー病気もあるので、
「出産は、奇跡だ。」という コウノドリ先生の持論(?)には、激しく同意するのです。

お産は、コワイノヨ〜

(だから、分娩に携わっている先生や助産師さんなどなどは、マジリスペクト!なのです。皆さんも、リスペクトしてあげて〜〜〜〜〜)